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 その日、アリスは、一人で留守番でした。
 お母様もお父様もお姉様も、アリスを一人残して、夜の音楽会に
出かけしまったのです。今年の公現祭で、陶器を引き当てた幸運が
及ばない、口惜しい出来事です。
 いつもアリスを大事にしてくれるルイス様も、
「君は、まだ小さいからね…。」と、
アリスの巻き毛が踊る頬を一撫ですると、家族と一緒に、馬車に
乗り込んでしまいました。小さくなっていく車影を見送っていると、
涙が出そうになりましたが、きゅっと唇を結んで我慢しました。
「私は、もう、小さい赤ちゃんじゃないもの。」
 今夜を一人で過ごせれば、皆もアリスを一人前の淑女だと認めて、
次の音楽会には、きっと連れて行ってくれるでしょうから。

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