8
親愛なるアリスへ


 夏至祭の今夜、白と青の薔薇の庭で、
 一月の公現祭以来となるお茶会を催します。
 お菓子や飲み物を持って遊びに来てください。
 お待ちしています。
     
                       気狂い帽子屋
9
「気狂い帽子屋さんですって?」
 それは、この間ルイス様がお話してくれた、物語の住人です。あぁ、
やはり、これは、間違いなくルイス様の掛け謎です。
 それなら、お菓子とお茶が用意された薔薇の庭で、ルイス様が待って
いるに違いありません。
 では、その庭は何処にあるのでしょう。
 封筒に地図でも入ってはいないかと覗き、何も無いのを確認しつつ、
逆さに振ってみると、一枚の白い羽が零れ落ちました。
 屈んで拾い上げようとすると、風も無いのに、羽は、アリスの指から
ひらりと逃げます。追うと、また逃げ。羽と鬼ごっこを繰り返す内に、
不意に重い影が差しました。
 見上げて、アリスは息を呑みました。

Copyright (c) 2008-2014 tenshibako All rights reserved.